抄録
小天体サンプルリターンは、太陽系物質科学を明らかにするために重要な科学課題の一つである。宇宙科学の分野では、岩石質の小天体を対象とした「はやぶさ」が成功し、現在、有機物を含む炭素質の小天体を対象とした「はやぶさ2」計画が進められている。近い将来、探査対象と想定されている天体には、現在進行形の「定常的なエネルギー、液体の水、有機物」がそろった氷衛星も含まれる(Tsou et al., Astrobiol., 2012: cf. Porco et al., Science, 2006)。そのような物理・化学条件が揃っているセッティングは、初生的な物質進化のプロセスを読み解く上で興味深い。本講演では、深宇宙探査の展望にある小天体サンプルリターンとその地上回収方法について併せて議論する。