抄録
【はじめに】2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故によって,東日本は大きな放射能汚染を受けた。気象研究所では,1950年代以降,大気の人工放射能による汚染の推移を時系列として把握してきた。【観測】福島事故の前後で途切れることなく,HVサンプラーと降水・降下塵の採取と放射能分析を継続している。γ線放出核種に加えて代表的なβ線放出核種Srの分析を行っている。また事故直後のHVフィルターをIPで撮像し,得られた黒点を与える粒子の検出をSEM-EDSにより行っている。【モデル】プリュームの輸送,沈着の再現を大気化学輸送モデルによって実施している。全球モデルとしてはMASINGAR,領域モデルとしてはエアロゾルモデルMRI-PM/rを利用した。これらに加え最新の逆解析手法によって放射性Csの放出量の推定や,アンサンブルシミュレーションにより輸送,沈着のモデル計算結果の不確かさの推定等の試みも実施している。