2019 年 19 巻 1 号 p. 9-34
本研究では、マザー工場の近距離移転における知識移転という極めて珍しいケースを取り上げる。注目したケースは、堀場製作所において2015 年10 月に実施された京都から滋賀への地理的・文化的距離が近い国内マザー工場移転である。本工場移転は、既存の知見によると知識移転がうまくいくケースであるが、工場移転時の知識不足により品質問題が発生していた。ここでは、発生した問題と知識移転との関係を解明することにより、知識移転が難しく、かつ問題を解決する上で重要な知識を明らかにする。詳細な分析により、問題解決のカギは、問題のなかった工場移転前の工程を良く知る技術者の存在であった。