抄録
火星隕石AHL 84001は、他の火星隕石に比べ著しく古い結晶化年代と複雑な衝撃変成史を示し、火星の古環境およびその後の進化史を探る上で重要な情報を持つ。一方で、火成のアパタイトやメルリライトなどのリン酸塩鉱物は、存在量は少ないが、マグマ中の微量元素を濃集し様々な情報を与える。特にUやThを含む為にU-Th-Pb年代分析に利用されてきた。本研究では優れた空間分解能を持つNanoSIMSを用いて、隕石中のリン酸塩鉱物のU-Pb年代を直径50-100ミクロンのシングル・グレインの分析で決定した。更に、グレイン内の元素濃度の分布から、隕石の経験した熱史について考察した。