抄録
我々は水圏環境中のメタンの起源推定や挙動解析の精度を高めることを目的として低濃度の溶存メタンについてδD 定量法を確立し、これを指標に用いた各種解析法の開発を進めている。既に人工的にメタン濃度を高めた環境であれば、微生物によるメタン酸化における炭素・水素同位体分別の濃縮係数の比が10程度であることが報告されている。この比が濃度によらない固有の値であれば、水圏環境中のメタン酸化の良い指標となる可能性がある。そこで今回、天然環境で低濃度のメタンについておきる酸化について、炭素・水素同位体分別の濃縮係数を実測し、その比が変化しないかを検証した。試料は十和田湖において採取した。その結果、炭素・水素同位体分別の濃縮係数は、それぞれ-26.2 ± 0.9‰、-233 ± 12‰となった。さらにその比は10程度の値を示し、nMレベルの天然環境においても室内実験と同様の結果が得られた。