抄録
近年、CaCO3多形の形成過程に関して、形成する多形の決定にその表面エネルギーが大きな影響を及ぼしていることが指摘され、原子レベルでの表面の構造や、原子・分子の吸着の素過程を明らかにすることが、さらに重要な意味をもつようになってきた。本研究においては、第一原理計算を用いて、本来aragonite構造に固溶しないMgが、aragonite表面近傍のCaサイトに置換する際のエネルギーを見積もるとともに、表面構造に与える影響を考察した。その結果、Mgは、aragonite最表面には、バルクに比べて大幅に小さいエネルギーで置換しうることが確認された。また表面構造を詳細に検討すると、置換されたMgの上層および下層のCO3は非常に強い影響を受けて変位し、表面構造に変化をもたらすことが明らかになり、CaCO3の形成や成長に影響を与えることが示唆された。