抄録
琵琶湖堆積物から過去の気候変動・環境変動を詳細に探るため,約240 kaの記録を保持する琵琶湖堆積物コア(BIW08Bコア)の上部80 mを用いて,約1 m間隔で堆積物中の炭酸塩の含有量および炭素・酸素同位体比の測定を行ない,炭酸塩の含有量および炭素・酸素同位体比の変動要因について検討を行なった.琵琶湖堆積物中の炭酸塩の炭素同位体比と酸素同位体比は,それぞれ,-36.1‰から14.3‰(変動幅50.4‰),-22.9‰から-2.0‰(変動幅20.9‰)の範囲の値を示す.炭酸塩の炭素同位体比と酸素同位体比は,0-14 kaの期間を除き,強い正の相関関係にある.今後更なる検討が必要であるが,炭素同位体比と酸素同位体比が同時に変動していることからCO2やHCO3-などの炭酸系の状態変化もしくは湖水中や間隙水中における複数回の同位体分別が関係していることが予測される.