抄録
本研究では、エネルギー可変な放射光光源を用いることで、蛍光X線分析(XRF)にX線吸収分光分析(XAS)を組み合せ、化学形態を区別した生物炭酸塩骨格中の微量元素の分布解析を試みた。特に、価数変化に対するスペクトルの応答が大きい硫黄化合物に注目し、炭酸塩中の硫黄の化学形態の同定を行うとともに、それらを古環境指標や生物個体の成長記録として利用する可能性について研究を行った。深海サンゴの一種であるモモイロサンゴの分析の結果、骨軸部分に含まれている硫黄はほぼ全て硫酸塩(SO42-)であり、有機的な硫黄は主に共肉部に含まれていることが明らかとなった。この結果は、生物炭酸塩の様な天然試料中の微量元素は、有機物と無機物の混合物であるだけでなく様々な副成分も混入しているとともに、試料中で安定に存在する部位に違いがあることを示している。