抄録
石油や石炭,堆積岩中には多種多様なナフタレン類が含まれており,それらの異性体組成は熱熟成度指標として広く用いられている。これらの起源の一つとして,セスキテルペンなどが考えられている。しかしナフタレン類はシンプルな構造であるため,それらの起源については十分に検討はされていない。本研究は,代表的なセスキテルペンの一つであるカジネンからナフタレンに至る続成変化のプロセスを実験的に解明することを目指した。カジネンの加水熱分解により生成したナフタレン類の異性体組成は体積盆地に認められるナフタレン類の組成と調和的であり,本研究はナフタレンの生成機構に関する知見を得た。また共存する粘土鉱物の有無により,その異性体や同族体などの組成に特徴的な変化がみられた。 本研究で得られた知見から,石油などに含まれるナフタレン類の分析により起源生物や堆積岩の特徴(岩質など)を評価することが可能である。