抄録
本研究では惑星物質内の水質変性を局所的な化学組成変動から探ることが目的である。CM2炭素質コンドライトに分類される狭山隕石のコンドリュールを試料として用いた。狭山隕石は、激しい水質変性を受けていることが指摘されている。また、コンドリュール内のオリビンの蛇紋石化した部分に水質変成に伴ってアルカリ元素が濃集したことが示唆されている。本研究では水との反応性に富むアルカリ元素に着目し、高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP)を用いて、狭山隕石のコンドリュール中のRb, Sr, Cs, Baの局所定量分析を行った。SHRIMPによるRb,Sr,Cs,Baの元素の局所定量分析の結果、コンドリュール内でRb/Sr比とCs/Ba比は各々0.11~1.29、0.007~019の範囲内で大きく変動しており、また両者の間には相関は見られなかった。高いCs/Ba比を示す部分が局所的に存在することから、Csがコンドリュール内の特定鉱物に濃集されている可能性も示唆される。