抄録
氷床コアと同様に過去の環境変動を記録し、かつ正確に年代が決定できる鍾乳石は、近年盛んに研究されている。なかでも、石筍の酸素同位体比(δ18O)はモンスーン強度に関与した水循環変動の復元に利用される場合が多いが、降水や気温、植物や土壌層における微生物の活動など様々な要因がその変動に寄与していると考えられ、その解釈は容易ではない。一般に、石筍の内部にはCaCO3を生成した原料の滴下水が保存されていることが多い。CaCO3を生成した水とCaCO3のあいだのδ18Oの差は、温度のみに依存すると予想されるため、これに基づいて石筍生成時の気温を定量的に復元できると考えられる。これまでの研究では、水の同位体比は、水を他の気体に変換した後で磁場型の質量分析計を用いて測定されてきた。本研究では、測定の簡略化を目指して、抽出した水の同位体比を水分子のままキャビティーリングダウン式分光計(CRDS)で測定するラインを作成した。