主催: 日本地球化学会年会要旨集
乾期と雨期にベトナム領内で紅河とその支流から採取した河川水試料(分析試料数は乾期:45、雨期:29)の分析を行った。得られたイオン濃度の特徴に基づいて紅河本流をラオカイ、ラオカイ‐ハノイ間、ハノイ以南の3つの地域に区分し、それぞれについて主成分と季節変化について述べる。中国との国境に接している最上流のラオカイとその周辺地域は乾期、雨期ともに最も総イオン濃度が高い地域であった。塩化物イオンと硫酸イオンの濃度も最も高く、中国領内における生活排水など人為起源による汚染物質が原因と判断された。ラオカイ‐ハノイ間はラオカイに比べて総イオン濃度が低い。これはホアンリエン山脈を涵養域とする支流から本流よりも低濃度な水が流入することが原因である。この影響は雨期に顕著で、総イオン濃度はラオカイの半分以下にまで下がる。ハノイ以南は総イオン濃度の変化が比較的小さいが、生活排水など人為起源の汚染物質の流入が原因であると考えられるような変化が各イオンにみられる。