抄録
福島第一原発事故によって海洋に放出された放射性セシウムの海底付近での輸送過程を把握するため、福島第一原発から約100 km東方の沖合に、2011年8月から約2年間にわたってセジメントトラップを設置し、沈降粒子を採取・分析した。放射性セシウムの粒子束は、主に2つのモードで制御されていた。一つ目は表層水中で放射性セシウムを取り込んだ粒子の急速な鉛直輸送(鉛直モード)であった。このモードは、特に事故後の早い段階で支配的だったと考えられ、観測点付近の海底における放射性セシウムの分布を形成したと推測された。二つ目のモードは、海底付近に運ばれた粒子状放射性セシウムの再移動であった(水平モード)。このモードにおける粒子状放射性セシウムの輸送は、大規模ではないものの、放射性セシウムの再分布を長期にわたって制御する主要機構として注目すべきと言える。