抄録
海洋に沈着した黄砂は、海水の化学組成を変動させ、海洋微生物群を消長に影響を及ぼす。しかし,その影響を直接的に実証した培養実験例は乏しい。そこで、本研究では、黄砂を海洋試水に添加する船上培養実験を実施した。黄砂は、富山県立山連峰の室堂平(2450m)において、春季に積雪断面調査を実施し、積雪のよごれ層から、黄砂鉱物粒子を含む積雪試料を採取した。また、比較のため、純白層の積雪試料も採取した。よごれ層の積雪試料は、粗大粒子密度が高く、高濃度の硝酸窒素が含まれていた。 紀伊半島沖合の70km地点で採取した海水に、よごれ層の試料を添加した海水では、硝酸窒素及び珪酸濃度が著しく減少するとともに、20μm以上の画分でChl.a濃度が著しく増えたため、大型珪藻類が生長促進されたと推察できる。また、細菌細胞密度の増大もみられ、超並列シーケンサーを用いて、細菌群集構造の動態解析も試みた。