抄録
1950年代後半から1960年代前半にかけて汎世界的に行われた大気圏内核実験により劇的に増加した14Cはヒト歯牙エナメル質中にも固定されている.本研究では,そのような高濃度14Cを用い,人体の誕生年推定が可能であるか検討を行った. 日本人歯牙試料27点の測定結果では, 平均して1.7±1.2年の誤差で年齢推定を行うことができた.実際の誕生年との差が大きくなる場合,歯牙エナメル質形成期間の個人差や炭素の吸収,固定までのタイムスパン,食性や地域効果による希釈または濃縮の可能性が挙げられるが,いずれも年齢推定ができなくなるほど大きな影響を与えないことが示唆され,日本におけるヒト歯牙エナメル質中14C濃度を用いた年齢推定は可能であると結論付けられた.