抄録
茨城県霞ヶ浦水系新利根川で養殖されていたイケチョウガイについて、貝殻の成長線方向に沿った時系列のサブサンプリングを行い、同位体比および微量元素濃度を測定した。δ18Oは水温と逆相関を示すが、降水量から推定した河川水のδ18O、および渇水(蒸発)の影響を受けている可能性がある。δ13Cには、はっきりした周期変化は認められない。Sr/Ca比、Ba/Ca比は夏場に高く、成長速度に影響されているという研究例と一致する。87Sr/86Sr比は5~7月頃に低くなる傾向が見られ、水温やSr/Ca比などとは相関を示さない。これは関東北部の第四紀火山および鬼怒川低地帯の第四紀テフラ層を起源とした低い87Sr/86Sr比を持った河川水の割合が、流域水田の営農に伴った新利根川の水収支により、その時期に増えていると考えられる。