抄録
本研究では、最終的に日本海における深層水の形成メカニズムや循環を詳細に明らかにすべく、そのトレーサーとして利用する人工放射性核種U-236の日本海表層へ供給変遷史を明らかにすることを目的とし、対馬海峡にある壱岐島で採取したサンゴコア試料の各年輪中U同位体分析を行った。結果、サンゴ試料から1935-2010年の間のU-236/U-238比を復元することができた。復元されたU-236/U-238比は、1955年、1959年、1963年の3つのピークを示した。大気圏内核実験による核出力が最大であった1963年にはピークは見られたものの最大値を示さなかった。U-236/U-238比の最大は、赤道太平洋核実験場で最も多く核実験が行われた1958年の一年後である1959年であった。このことから日本海へのU-236供給は、グローバルフォールアウトによる1960年代の導入以前に、北赤道核実験場で行われた水爆実験の影響を受けた海水が既に流入しており、その影響は相対的に大きいことが分かった。