抄録
温暖化や成層圏オゾン層破壊をもたらす一酸化二窒素(N2O)のアイソトポマー比(非対称NNO分子内の15N分布も考慮した同位体比)はN2Oの起源、生成・消滅過程や全球収支の推定に有効な指標である。これまでに数地点での大気観測や極域のフィルン中に保存された過去の大気の分析により、14Nに富むN2Oを放出する発生源がN2O濃度の増加に寄与していることが報告されているが、北極圏に関しては、大気中における継続的な観測の報告例がない。演者らは西シベリア・ノボシビルスクの上空500mおよび7000mにおけるN2Oアイソトポマー比の分析を2005年から毎月行っている。濃度の増加傾向や窒素同位体比の減少傾向は、既往研究と概ね一致したが、高度による相違や、窒素同位体比の減少傾向が近年変化している可能性が明らかになった。