抄録
海水中の希土類元素(REE)の循環において、ケイ藻ケイ酸殻が重要な担体であることが最近報告された。しかし、ケイ藻ケイ酸殻は変質を受けやすいため生産性の極めて高い海域でなければその組成を分析によって直接求めるのは困難である(Akagi et al.,2011)。明らかにされたケイ酸組成に基づき、深層水中のREE濃度を決定する機構についてREEはケイ藻ケイ酸殻の溶解によって供給され、炭酸カルシウム粒子や有機物によってスキャベンジされる(Akagi,2013)という新しい考えが提案された。ところで、スキャベンジングに際し、海水中のREE元素とスキャベンジされるREE元素との間で、速やかに交換反応が起こる(Tachikawa et al., 1997; Akagi, 2013)。本研究ではこれら二つの知見より、海水とスキャベンジされる希土類元素間の分配パターンが一定になるという仮定を導入し、ある海域におけるREEとSiの鉛直濃度分布のみからその海域における珪藻のケイ酸殻中のREE組成を推定した。