抄録
現在の日本海は,海水の交換が制限された半閉鎖的な環境であり,外洋と独立した深層水循環を持つ。日本海形成以降,どのような海洋環境の変遷を経て,現在のような循環形態になったかについては,これまで多くの研究で議論されてきた。放散虫群集解析や底生有孔虫の出現・消滅などを検討した研究があるが,底層水の溶存酸素量の変化ついては複数の仮説があり,その検証が課題となっている(上栗・本山,2007; Tada, 1994; 花方ら,2001)。そこで,本研究では日本海の底層水塊の起源の変遷を復元することを目的とし,過去900万年間を対象として,海洋堆積物中の魚歯化石のネオジム同位体比(143Nd/144Nd)の分析を行った。