主催: 日本地球化学会年会要旨集
環境中に放出された放射性セシウムは土壌中の粘土鉱物に強く吸着することが明らかとなっている。これは土壌を構成している層状ケイ酸塩鉱物の層間またはフレイドエッジサイトと呼ばれるサイトに取り込まれ安定に吸着していると考えられている。一方で、粘土鉱物の一部(スメクタイトなど)はエチレングリコールなどの低分子量有機物を加えると、層間距離が広がることが分かっている。そこで本研究では、土壌試料にさまざまな有機物を加え、放射性セシウムの脱離量をガンマ線測定により定量し、土壌鉱物からの放射性セシウムの脱離に対する低分子量有機物の影響についてインターカレーションの観点から検討した。本研究の結果、一部のアミノ酸や直鎖アルキルアミンなどの有機物を加えると、天然土壌からの放射性セシウムの量が1%近く増加することが明らかとなった。これは、土壌中のスメクタイトへの有機物のインターカレーションにより層間が広がったことで放射性セシウムが脱離したためと考えられる。