抄録
約2億5千万年前の古生代ペルム紀のおわりに、地球生命史上最大の大量絶滅が起き、その後の生命環境の回復には500万年以上の期間を要したことが知られている。この事変が起きた当時には、高一次生産を背景に大規模な貧酸素海洋が発達していたと推定されている。そのような海洋環境変動史の研究例の多くが浅海性炭酸塩岩層の研究からなされてきたなかで、日本に残る遠洋域深海性の堆積岩層はより広域の地球環境変動史を知る上で重要な研究資料として注目されている。本発表では、世界で最も連続保存性が良い深海相ペルム紀-三畳紀境界層を用いた地球化学分析の成果を報告する。研究成果は、大量絶滅事変と海洋環境変動の同時性と因果関係を議論することに加えて、大規模な海洋環境変動にともなう微量元素の挙動を理解する上でも有意義な情報を提供する。