抄録
地球型惑星における水の起源を論じる際、分化隕石が持つ水の情報は有効な手がかりとなる。ユークライトは小惑星ベスタを起源とすると考えられ、地球型惑星の初期地殻に関する非常に重要な知見を与える。本研究では、玄武岩質ユークライトAgoult中のリン酸塩鉱物について、同一粒のU-Pb年代と含水量をNanoSIMSによる局所同位体分析にて調べた。その結果、リン酸塩鉱物の全Pb/U年代は4523 ± 13 Maと得られ、この隕石のジルコン(4554Ma)より有意に若く、斜長石(4532Ma)と一致することが分かった。さらに、同一粒の含水量は~100ppm未満と非常に少ないことが示された。本研究結果から、Agoultのリン酸塩鉱物は約4523Maに再加熱イベントを経験し、その際の周辺環境は水に乏しかったと考えられる。これは、ベスタ地殻の含水量に時間的・空間的な不均一が存在していた可能性を示唆している。