抄録
地球大気中の酸素濃度は,原生代の初期(約21億年前)と末期(約6億年前)にそれぞれ急上昇したことが地質記録から示されている.本研究では,シアノハ?クテリアの酸素代謝に関わる酵素の発現量変化から、これらの酸素濃度上昇イベントに関する情報を得ることを試みた.酸素濃度に応じて発現量が変化すると予想されるRubisCO (ribulose 1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase)およびSOD (Superoxide dismutase)について,過去の遺伝子発現量を分子系統解析により推定したところ,両者は原生代の初期および末期の酸素濃度上昇イベントと同時期に分岐した系統群において,大量発現するようになったことがわかった.タンパク質の祖先型プロモーター配列は,過去の地球環境化学変動を読み解く良い指標となることが期待される.