抄録
タングステン(W)は、現在の海洋において表層から底層までほぼ一様の鉛直濃度分布をとるが、海底熱水系周辺などでは挙動が異なる。Wは複数の安定同位体をもつので、同位体比を分析することで、海洋と大陸および堆積物の間のフラックスをより精密に評価できると考えられる。しかし、海水中のW濃度は約50 pMにすぎず、その同位体比を測定できる方法は存在しない。そのため、マルチコレクター型ICP質量分析装置(MC-ICP-MS)を用いる正確で簡易な海水中W安定同位体比分析法の開発を目的とした。MC-ICP-MSによる測定のためには、Wを海水5 Lから5000倍濃縮しなければならない。本研究では、キレート吸着剤 NOBIAS CHELATE-PA1(日立ハイテクノロジーズ)によるWの濃縮分離、および陰イオン交換樹脂 AG1-X8による精製を検討した。また、実際の海水を試料としたときの結果についても発表する。