抄録
ヨウ素の放射性同位体I-129の海洋への主な放出源はSellafield(英)とLa Hague(仏)にある核燃料再処理施設であり、放出されたI-129の多くは北海を経て北極海に流入している。その後I-129の一部は北極海北西部に位置するチャクチ海に流入すると推測されているがその実態はわかっていない。そこで同海域におけるI-129の鉛直分布と水塊構造からI-129流入の可能性を評価した。チャクチ海におけるI-129濃度と水温塩分の分析の結果、チャクチ海内の水塊によるI-129濃度に有意な差はなく、北極海からチャクチ海へI-129を高濃度に含む海水が流入している可能性は低いことが示唆された。