抄録
亜鉛は生体内では鉄についで存在量の多い重金属元素と言われている。海洋植物プランクトン中においても、亜鉛は炭酸脱水酵素の一部であるとともにアルカリホスフォターゼに含まれ、リン酸エステルの分解にも関わっている。海水中の亜鉛は外洋域においては栄養塩型の鉛直分布を示し、濃度レベルは10-10 -10-9M程度となっている(Bruland et al., 1994)。また、海水中ではその98%以上が有機錯体を形成しているという報告(例えば、Bruland 1989; Ellwood and van den Berg 2000)もあるが、その詳しい挙動は十分に解明されていない。本研究では沿岸熱水活動が報告されている長崎県橘湾において海水を採取し、海水中の亜鉛の存在状態を調べた。