本研究では,熱水に伴う鉄やマンガン酸化物のδ98/95Mo変動を明らかにすることを目的に,現世海底の異なる5地点より採取された熱水性の鉄およびマンガン酸化物のMo同位体分析を行った.その結果,多くの試料が,海水起源の鉄マンガン酸化物と同程度の値を示し,海水に溶存するMoの吸着反応で説明できることが分かった.しかし,海水起源の鉄マンガン酸化物よりも,δ98/95Moが大きく変動することを確認した.このことは,熱水由来のMoが,酸化物中のδ98/95Moに少なからず影響することを示唆する.太古代や原生代前期の海水Mo濃度は,現世よりも優位に低い (e.g., Scott et al., 2008 Nature).従って,太古代・原生代前期における鉄マンガン堆積物では,海水Moによる"緩衝作用"が働かず,熱水由来のMoにより,δ98/95Moが大きく変動した可能性が高い.