本研究では、鉄マンガン団塊へのヒ素(As)とアンチモン(Sb)の濃集機構の違いを明らかにすることを目的に、As、Sbの溶存時の化学構造の違い(Asは4配位4面体、Sbは6配位8面体)に注目し、As、Sbがマンガン酸化物および水酸化鉄へ吸着する際の吸着種についてX線吸収微細構造(XAFS)法と量子化学計算を用いて分子レベルで評価した。量子化学計算の結果より、水酸化鉄およびマンガン酸化物に対して、単核二座結合の相互作用エネルギーは、AsよりSbの方が大きいことが示された。これには構造の類似性が影響していると考えられる。XAFSおよび量子化学計算による吸着種の解析結果より、As、Sbのいずれも水酸化鉄には二核二座結合で吸着していた。また、マンガン酸化物に対するAsの吸着種は二座結合に比べて不安定な単核単座結合であり、Sbは単核二座結合であることが示唆された。これはSb(VI)の対称性やイオン半径がFe(Ⅲ)やMn(Ⅳ)のそれに類似しているためだと考えられる。