水銀安定同位体地球化学は、重元素安定同位体比分析技術の発展に伴い研究が進み、近年では環境動態解析ツールとしての成熟度が高まりつつある. 水銀は環境中で様々な酸化還元反応により動態が変化し、大きな質量依存同位体分別(MDF)を示す. また、光化学反応に敏感な非質量依存同位体分別(MIF)を示すため、ユニークなトレーサーとして利用できる.本講演では、独自データとして北西太平洋のカツオ試料における水銀安定同位体比分布を示し、既存研究で報告された各種リザーバー(大気・海洋・生物試料)におけるMDF指標とMIF指標の変動幅・同位体分別挙動と比較を通じ、ソース解析・ヒトへの曝露源解析における水銀安定同位体比の有効範囲について検討する.