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土壌に微量ではあるが普遍的に存在しているCdは,イネに吸収されやすくコメに蓄積することから,日本を含めて世界的にコメの消費量が多い地域における問題となっている.土壌からイネへのCdの移行には,土壌中でのCdの化学形態が密接に関係しており,土壌の還元に伴う硫化カドミウム(CdS)の生成によってイネへの吸収が抑制されることが指摘されていた.本研究では,放射光を光源とするX線吸収微細構造(XAFS)分析によって,土壌の還元から酸化に至る一連の過程におけるCdの溶解性と化学形態の変化について明らかにすることを目的とした.土壌の還元が進行することによって,CdSの生成は促進されるが,その割合は多くても全Cdの50%程度であること,CdSの溶解は酸化還元電位の上昇と密接に関係しており,硫黄の濃度や化学種にも影響を受けることが示唆された.