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ジルコンは,物理化学的安定性から年代測定等に幅広く利用される鉱物であるが,一方でジルコンの低温熱水変質作用の報告もあり,分析部位の選定や元素の閉鎖系の吟味は重要である.そこで,ジルコンの観察およびSHRIMPによるU-Pb年代測定,化学組成分析及び酸素同位体分析から,ジルコンの分析点選定及び変質作用の指標を考案した.分析試料はアメリカ合衆国ダルース複合岩体の斜長岩(AS3)中のジルコンを用いた.AS3ジルコンの組成像の暗部や表面下のクラックを含む部位ではU-Pb壊変系の擾乱,Zr存在度の減少,Ca,Al,Fe,Mn,Mg,K存在度の増加が見られ,ジルコン中のクラックが流体の通り道となり,その周囲から変質作用が進行したためと考えられる.よって,ジルコンの分析では組成像の暗部に加えて,表面下のクラックを避けることが重要となる.変質部位識別の指標として,Ca存在度に加え,K存在度が有効である.