沈み込み帯において、スラブから脱水する水がどの程度地表へ供給されているかを明らかにすることは、地震・火山・地熱資源などの観点から重要な課題である。しかし、実際の地下水試料は様々な起源をもつ水が混合したものであり、それらの混合割合を明らかにすることは困難であった。本研究では、ハロゲン元素比(I/Cl比およびBr/Cl比)を用いて、東北地方で採取された塩水の起源について、「海水」「スラブ水」「かん水」の端成分を仮定して、その混合割合の推定を行った。その結果、最寄りの火山から20km圏内においてスラブ水の割合が高くなっていた。秋田・山形の油田・ガス田地域にはかん水の寄与が確認された。また、海水成分は沿岸域だけではなく内陸域にも見られ、盆地の堆積岩中に取り残された古海水であると考えられる。本研究では、各端成分のハロゲン元素比を仮定しているため、今後はその妥当性について検討していきたい。