日本看護管理学会誌
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原著
患者中心のケア提供を実行する看護師のリーダーシップ役割に関する指標と評価
大場 みゆき
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2009 年 13 巻 2 号 p. 21-30

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抄録

本研究の目的は,患者中心のケアを推進する看護リーダーシップ実践の診断指標(SAIL)を,統計的な検証を経て開発し,スタッフの実践を評価することである.直接的ケア場面における看護リーダーシップとは「看護師が直接的なケア場面で,患者中心のケアをめざし,患者の擁護者として関係者(患者・家族・医療チーム)に与える影響過程」とする.本調査は62項目(5件法)の原案を用いて看護師275名に実施し,有効回答率82.9%であった.まず項目分析で51項目を選択し,因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った.その結果20項目5因子が採択され,第Ⅰ因子“ケア目標の共有”,第Ⅱ因子“関係性の意識化”,第Ⅲ因子“柔軟なケア提供”,第Ⅳ因子“多職種との連携”,第Ⅴ因子“専門職としての認識”と命名した.累積寄与率は52.16%であった.

SAIL の信頼性は,Cronbach のα係数0.90,下位尺度のα=.73~.83より確認した.構成概念妥当性は,因子分析で抽出された因子が原案の内容区分とほぼ対応したこと,基準関連妥当性はカンファレンスでのリーダーシップ実践との強い相関(r=0.81),内容妥当性は実践看護師および看護教員から項目,尺度名の支持を得たことで確認した.弁別妥当性は,6-DS改訂版(6-Dimenstion Scale of Nursing Performance)を用いた看護実践能力の判別が可能であったことから確認した.またSAILの尺度得点から,ケア場面でのリーダーシップ実践は十分とはいえず,リーダーシップ育成の必要性が示唆された.

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© 2009 一般社団法人 日本看護管理学会
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