本研究では特に島弧の火山活動に着目し、マグマの上昇に伴い物理化学的環境がどのように変化しているのかを、火山噴出物に含まれるジルコンの年代・微量元素濃度測定を通じて追跡する。試料には島根県三瓶火山の噴出物のうち、噴出年代が報告されている4~10万年前の三つのテフラより分離したジルコン粒子を用いた。分析の結果、粒子年代値は同一試料の中でも5万年前後の変動幅を示し、古い粒子から新しい粒子に向かってTh/Uが~3から徐々に減少し、噴火直前では~0.2に収束することがわかった。ジルコンとメルト間でのTh/U分配が温度条件で大きく変化しないことを考えると、観察されたジルコンTh/Uの時間変動は上昇に伴うメルトの化学組成変化を示唆する。さらに、高いTh/Uを持つ古い粒子は一般的な珪長質火山岩類(Th/Uは2~4程度)が固化する領域より深部で晶出したと考えられ、そのような深部領域でのメルトは大きくThに富む可能性が示唆された。