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本研究では、破壊分析法によるターゲット分子同定と共に、赤外顕微分光イメージング法(FT-IR imaging)およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF/MS)による非破壊/半破壊分析法を応用し、化合物レベルのバイオマーカーマッピングを行った。分析対象は、イタリアのシチリア島で採取した、全長数百µmのフィラメント状化石微生物を含む地中海塩分危機時に堆積した石膏である。分析の結果、化石微生物部分に真核生物起源のステラン類、細菌起源のホパン類が含まれていることが明らかになった。これは、現代に見られるような真核生物と細菌の共生関係が当時の高塩環境にも存在した可能性を示唆する。現在、DNA分析を予察的に行っているが、生物源有機物の位置情報を化合物レベルで特定できていることはこの分析結果を評価する上で重要な判断材料となる。バイオマーカーや古DNAの位置情報を制約できることを示した本研究は、地球科学だけでなく生物学など広い分野にインパクトを与えると期待される。