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中国地方の6地点における月毎の降水中の硫酸イオンの酸素同位体比と硫黄同位体比の測定を行った。非海塩性硫酸の酸素と硫黄同位体比から,硫酸イオンは,季節により三つのグループに分かれる。冬期の中国の石炭燃焼に影響を受けている高い硫黄同位体比の硫酸のグループA,夏期の主に国内の石油燃焼の影響を受けている低い硫黄同位体比の硫酸のグループB,春先のグループAとBの中間的な硫黄同位体比の値を持ち明らかに高い酸素同位体比を持つ硫酸のグループCである。グループCは,他のグループに比べて非海塩性のSr同位体比が最も高く,黄砂からの溶解成分が寄与していることを示唆しており,グループCの硫酸イオンにも黄砂からの溶解成分が寄与している可能性がある。今後,黄砂の溶解性成分の酸素同位体比の測定をして比較検討する必要がある。