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奈良県川上村の入之波温泉にて、堆積物と温泉水試料を採集し、酸素・水素同位体ダイアグラムと微量元素の特徴を調査した。温泉水の酸素・水素同位体ダイアグラムは、天水曲線にほぼ一致した。堆積物および温泉水の希土類元素パターンは、正のユウロピウム異常(Eu/Eu* = 6.7~31)を示した。温泉水と堆積物の希土類元素濃度から分配係数(Kd)を見積もると、ユウロピウムは残りの元素に比べて1桁小さい値をとった。高温・高圧下で塩化物イオンが存在する場合、Eu(II)と塩化物イオンが選択的に錯生成し、安定化することが知られている。本研究で得られたユウロピウムの正の異常と小さな分配係数は、Eu(II)の塩化物錯体の存在に依るものである可能性がある。