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霧島山硫黄山周辺では2007年以降噴気活動が消失していたが、2013年12月頃から微小地震、2014年8月には火山性微動が観測され(船崎ほか, 2017)、2015年12月には山頂付近で噴気活動が再開した。硫黄山周辺ではその後も噴気量の増大や噴湯孔の出現、新たな噴気孔の形成に伴う土砂噴出が発生するなど(東京大学地震研究所, 2017)、活発な状態が続いている.本研究では、霧島山硫黄山周辺に湧出する温泉水の化学組成および水素・酸素安定同位体比を分析し、その起源や火山活動に伴う水質変化等を調査している。温泉水の多くは、火山性流体と天水起源の浅部地下水との混合から成る酸性硫酸泉であり、山頂噴気域近傍の噴湯孔では気液分離による重水素・重酸素の濃縮を受けたとみられる高いδD, δ18O値の酸性塩化物泉も認められた。定点観測を実施している温泉水では、火山活動に伴う水質や安定同位体比の変化が観察されている。