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大気エアロゾル中の硫黄は主要な汚染物質の一つであり、その化学形態は硫黄の由来や挙動を知る上で重要な情報である。非破壊で硫黄の化学形態を分析する手法としてはX線などを用いた分光学的手法が有効である。特に大型放射光施設を利用したX線吸収分光法(XAS)は低濃度の硫黄の化学形態を分析できることから、乾性沈着中の硫黄の化学形態分析等に利用されている。しかし大型放射光施設の利用は自由ではないため、測定の簡便さにおいて課題がある。一方でラボ型二結晶の高分解能蛍光X線分析装置(XRF)を用いた硫黄の化学形態分析も報告されているが、大気エアロゾル中の硫黄のような極低濃度の試料に対して信頼性のある分析が行えるかどうかは明らかでなかった。そこで本研究では低濃度硫黄を含む大気エアロゾル試料についてXRFとXASの分析を行い、両者の比較からラボ設置の汎用型蛍光X線分析装置の低濃度硫黄試料への適用を検証することを目的とした。