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鉱物粒子中に含まれるカルサイトは大気輸送中に硫酸と反応を経て、石膏へと変質することが報告されている(Takahashi et al., 2009)。硫酸の前駆体である二酸化硫黄の近年の変化 (Crippa et al., 2016)に伴い、カルサイトと硫酸の反応量も変化していると予想される。これは高吸湿性の硫酸アンモニウムの生成を抑制し、硫酸塩エアロゾルの雲凝結核能を低下させると考えられるため、エアロゾルの雲凝結核能を考慮する上で反応量の変化について理解することは重要である。また、グリーンランドには北半球で排出された自然起源・人為起源の様々な物質が輸送されてきており (Drlmas, 1992)、各年代に排出された物質が氷床中に捕捉されている。そこで、本研究ではグリーンランド南東部で掘削された氷床コアに捕捉された粒子中のカルシウム化学種の解析から、石膏の割合の変化と各国の二酸化硫黄の排出量の変化の関係を明確にし、各年代での石膏による硫酸塩エアロゾルの吸湿性抑制効果の評価を目指した。