p. 8-
本研究では、様々な国産二枚貝の殻のNa/Caに着目し、結晶系や生育環境(緯度・塩濃度)との関係を調査した。また、異なる溶媒条件で合成した炭酸カルシウム結晶を分析し、Naの分配係数の決定を試みた。この結果、二枚貝のNa/Caは方解石に比べてアラレ石の殻で、有意に高い値を示した。これに対し、20℃で合成した方解石の結果は、方解石の飽和度に依存してNaの分配係数が0.0002から0.02まで上昇した。特にCa濃度が0.05 Mのときには0.001となり、実際のホタテガイにおける概算値とオーダーで一致した。貝殻の石灰化母液でCaの濃縮が起きていることを考慮すれば、実験の結果は実際の殻形成時のNa取り込み過程をよく表している可能性が高い。