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瀬戸内海は日本最大の閉鎖性海域であり、その東部には流入量の大きい河川が多い。沿岸域における物質輸送と生物生産が堆積物中の生物源有機分子組成にどのように記録されるのかを理解するため、瀬戸内海の表層堆積物中の藻類バイオマーカーの分析を行った。真正眼点藻に由来する長鎖アルキルジオールに占める C32 ジオールの割合は、淀川水系で顕著に高く、大阪湾の湾奥部から紀伊水道にかけて低下した。淀川水系でC32ジオールが卓越することから、C32ジオールの割合は、沿岸域における河川水流入指標となることが示唆された。ステロール組成に占める渦鞭毛藻由来ステロイドの割合は瀬戸内海、太平洋黒潮域、淀川水系 の順に高く、沿岸域で渦鞭毛藻生産が盛んであることが示唆された。陸水から外洋にかけての複数の藻類バイオマーカーの分布パターンと沿岸域の環境の対応関係から、藻類バイオマーカーの環境指標としての特徴を議論する。