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ルビジウム(Rb)が層状珪酸塩中で内圏錯体を形成する際にRb安定同位体分別が起こるかどうかを明らかにし、新規同位体地球化学ツールの開発を目的とした。Rb+を様々なpH、イオン強度条件でバーミキュライト、モンモリロナイト、イライトに吸着させ、EXAFS実験によって吸着構造を解析した。比較として強酸性陽イオン交換樹脂に対しても同様の実験を行った。これらの吸着に伴うRb安定同位体比をマルチコレクタ型ICP質量分析計で測定した。天然の海洋堆積物試料中のRbの存在状態ををEXAFSおよびµXRF-XAFS-XRDで解析した。Rbはバーミキュライト、イライトに吸着されると内圏錯体を形成し、Δ87Rb =-0.41±0.15‰の同位体分別が起こるが、モンモリロナイト、強酸性陽イオン交換樹脂では外圏錯体を形成し、分別が検出できない程度に小さかった。また、堆積物中のRbも内圏錯体を形成していた。従ってRb安定同位体分別は水-堆積物間でも起こっていると考えられ、固液比を記録する指標としての可能性がある。