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炭酸塩鉱物は地球史を通じて生成され、その微量元素組成や同位体比から沈殿時の海洋の温度やpHを推定できるため、地球環境の変遷を探る上で重要な役割を果たしている。近年、新たな環境指標として炭酸塩中のマグネシウムの同位体分別が注目されている。天然炭酸塩鉱物には主にカルサイトとアラゴナイトの結晶形が存在し、主成分のカルシウムではカルサイトに比べアラゴナイトの同位体分別の方が大きいのに対し、マグネシウムではアラゴナイトの同位体分別の方が小さくなることが報告されている。この指標の有用性を評価するためには炭酸塩鉱物中のマグネシウムの局所構造に注目し、同位体分別の変動要因を理解することが重要となる。本研究では、結晶構造の違いがマグネシウムの同位体分別にどのような影響を与えるかを調べるため、天然炭酸塩試料と実験室内で合成したカルサイト・アラゴナイトにおけるマグネシウムのXAFS法による局所構造解析を行った。