p. 37-
炭酸カルシウムは溶液中のMg/Caモル比に依存して沈殿する結晶形がカルサイト・アラゴナイトに分かれる事が知られているが、溶液中マグネシウムの存在が炭酸カルシウムの結晶多形選択にどのような影響を与えているのかは未だ十分に議論されていない。無機的なアラゴナイトの合成には、マグネシウムの他に銅を添加する手法が報告されている。そこで本研究ではカルシウムに比べイオン半径が小さい金属イオンが炭酸塩結晶多形選択に及ぼす影響の解明を目標に、炭酸カルシウム中に共沈した銅の化学状態を銅K吸収端XAFS測定で調べた。EXAFS測定によるとカルサイト中の銅はCu-O距離を伸長させてカルシウムの置換を示した一方で、アラゴナイト中の銅は水分子を配位した遊離銅(II)イオンに近いCu-O距離を持ち、隣接するカルシウムサイトに相当するカルシウムの存在が確認されなかった。アラゴナイト中の銅は、酸素を9配位するカルシウムサイトの単純な置換ではないとみられる。