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本研究では、北西太平洋に位置している拓洋第5海山と拓洋第3海山において、平頂部である1000m付近から最深部である5500m付近までの一連の水深から遠隔操作型無人探査機により採取した鉄マンガンクラスト表面試料について、Te濃度・安定同位体組成を明らかにした。Te濃度・安定同位体組成の相関関係が、水深が深くなるに従い変化するという同様の傾向が2つの海山において見られた。相関関係が変化する水深は2つの海山で異なり、酸素極小層が拓洋第5海山よりも深い水深に位置する拓洋第3海山では、相関関係の変化する境となる水深も同様に深いことが明らかになった。異なる海山における酸素極小層とTe濃度・同位体組成の相関関係の変化する境の水深の対応関係は、海洋におけるTeの挙動が溶存酸素濃度の変化と関連する可能性を示唆しており、その変動過程について議論する。