大気中のメタンは代表的な温室効果気体であるが、その発生源・供給源や挙動には未解明の点も多い。本研究では、琵琶湖水中に過飽和となっているメタンの起源を特定し、さらに酸化分解を中心とした水柱内でのメタンの挙動を把握することを目的に、2013年以降水柱中の溶存メタンの安定同位体比(炭素および水素安定同位体比)を継続的に観測した。水柱の溶存メタンの炭素および水素安定同位体比から、水柱で進行した酸化分解を補正し、その起源のみを反映していると考えられる新指標の値を算出し、水柱の溶存メタンの主要供給源となっている可能性のある複数のメタンと、その値を比較した。その結果、琵琶湖表層で過飽和となっているメタンは琵琶湖の沿岸域 (littoral zone) からの流入によって供給されている可能性が高いと結論した。これは炭素安定同位体比のみを指標に用いて得られた先行研究の知見とも一致した。