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地球内部の詳細な地震学的構造を推定するために、私たちの研究グループは地震波形をデータとしてそのまま用いる「波形インバージョン法」の手法開発を独自に行ってきた。波形インバージョンを行うためには、正確で効率的な理論波形計算および効率的な逆問題の定式化が必要であり、それぞれのアルゴリズムおよびソフトウェアの開発を行ってきた。その手法を用いてアメリカ合衆国本土に展開された稠密アレイ観測網(USArray)で観測された地震波形の解析を行い、中米下および北部太平洋下の最下部マントル400kmを水平方向約250kmおよび鉛直方向50kmの解像度で3次元S波速度構造推定を行った。得られた最下部マントルのトモグラフィ像には、沈み込んだスラブと解釈できる顕著な高速度異常およびスラブの沈み込みによって誘発されたと解釈できる低速度異常が見つかった。この結果は、地球表層の運動がマントル対流の様式に影響を与えていることを示唆する。