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本研究では、河川水に含まれるアルカリ度と主な溶存無機成分を測定し、流域における岩石風化を評価した。調査対象は弘前市郊外にある平川支流の大和沢川である。上流域は主に山地で人為影響が少なく、下流域には生活起源の排水などの流入がある。積雪期の1月に開始し、融雪期を経て、現在も観測を継続している。その結果、大和沢川の溶存成分濃度の平均値は上流域と下流域で明瞭な差があり、多くの成分が流下に伴い増加することが分かった。上流域では、CaとMgイオンの当量濃度の和とアルカリ度の相関が極めて強く、最上流部では炭酸水素イオンの対イオンとして48%がCaとMgイオンの和で説明できるのに対し、最下流部ではそれが79%に増加した。さらに、海塩濃度の補正を行うと、炭酸水素イオンの対イオンに占めるCaとMgイオンの和の比率が高くなった。このことから、流下において岩石成分の溶出がアルカリ度を高めているものと推察された。